大判例

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仙台高等裁判所 昭和27年(う)513号 判決

原審第三回公判調書中、証人末永ハルヨ、同末永正夫の各供述記載、被告人の検察官に対する供述調書中の供述記載及び原審第四回公判調書中、原審証人額賀任(医師)の供述記載に徴すれば、末永方で飲食した宮本与助帰宅のため同家門口を出たところ偶々自転車に乗つて通りかかつた被告人の姿を認めるや両手を挙げて「止まれ」と呼び止め、自転車をおりた被告人に対し「俺の畑にまたリヤカーを引入れたな」と云い、被告人と二、三問答を応酬しているうち突然宮本が「生いきな」と云いながら手で被告人の頬を殴つたので、被告人は「あまり人をなめるな」と云いながら自転車を立ててから宮本の傍へ行き、同人の胸を両手でおさえて道路わきの垣根のところに押し倒したこと、倒された宮本は起き上つて再び殴ろうとしたので被告人は両手で宮本の両手を押さえ、宮本はこれを引き離そうとして互に揉み合い、骨の発育不全な宮本の左腕に左上膊骨折の傷害を与えたことが認められる。

右の場合、被告人が宮本を押し倒したのは、いわゆる売られた喧嘩を買つたと謂い得るが、喧嘩闘争の場合でも闘争の全般からみてその行為が法律秩序に反するものでないと認められる限り、刑法第三十六条の正当防衛の観念を容れる余地がないものとはいえないというべきである。

本件の場合、倒れた宮本が起き上つて再び殴りかかろうとしたので、被告人はこの急迫不正の侵害に対して自己の身体を防衛するため已むなく相手を押さえたものというべきであつて、かかる防衛は前記闘争行為の全般からみて、法律秩序に反するものとは認め難い。然らずしてかかる場合、相手方の危害に任せなければならないということは条理上首肯するを得ない。被告人のかかる場合におけるかかる所為は、刑法第三十六条の正当防衛に該当する一場合として認容さるべきである。なお結果においては骨折の傷害を与えたが、それは偶々被害者の左腕の骨が、病的状態であつたためであつて、被告人が殴りかかろうとする相手の腕を押さえたことを目して防衛の程度を超えたものとは認め難い。

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